三段峡とは
三段峡は,広島市デルタを形成する太田川の源流の1つにあたる柴木川が作り出す,美しい峡谷である。1925年に「史蹟名勝天然紀念物保存法」により名勝指定,1953年11月に国の特別名勝に指定された。三段峡は,下流の長淵から樽床ダムおよび田代川と横川川の合流点付近(田代出合)までとされている。
「史蹟名勝天然紀念物保存法」により名勝指定されたため,峡谷内には大規模な開発はおこなわれていない(しかし,峡谷内唯一の定住集落,餅ノ木を,大規模林道が通っている)。その一方で,観光地として聖湖からJR可部線の三段峡駅まで,遊歩道が整備されており,自然の景観を最大限に残しながら,軽装で峡谷を楽しむことができるようになっていることは,先見の明をもった先人の偉業の結果であるといえる。
峡谷内に大規模な開発がおこなわれなかったとはいえ,すぐ上流には大規模な樽床ダムが作られ,峡谷の水量は減少し,かつての魅力には遠く及ばないとする声もある。しかし,それでもなお,三段峡の景観は魅力にあふれていることを,私たちは知らねばならない。また,三段峡の周囲にも貴重な自然が残っている。
三段峡の訪れ方
広島市内方面からのもっとも基本的な訪れ方は,柴木口(旧JR可部線の三段峡駅前)から徒歩で入峡する方法である。ここには広島市内からの路線バスも発着するが,そこからすぐに,美しい峡谷が始まっている。公共交通機関からのアクセスがこれほど優れており,しかも自然がよく残っている大規模な峡谷は,貴重な存在だ。ここから黒淵までは,勾配も比較的少なく,「散策」にも手ごろだろう。
三段峡へは,聖湖方面から入ることもできる。この場合,樽床ダムまでマイカーで入ることになる。樽床ダムから三ツ滝,竜門に至るルートは,距離も短く,景観も変化に富んでいて,比較的気軽に峡谷を満喫できるだろう。ただし,樽床ダムと三ツ滝の間は,非常に急な坂道である。遊歩道が整備されているとはいえ,歩きやすい靴を履くようにしておく必要があるだろう。手ごろな「散策」とは,言い難い。
そのほか,林道を経由して田代出合から入る方法や,餅ノ木から入る方法もある。
▼バスの利用について
三段峡を訪れるときには,マイカーだけでなく路線バスが利用できる。
広島バスセンター(あるいは可部駅前)と三段峡を結ぶバス路線を利用すると,旧・JR三段峡駅前まで行くことができ,柴木口から入峡が可能である。
便は少ないが,広島駅新幹線口と益田駅前を国道191号線経由で結ぶバスを利用すれば,餅ノ木方面からの入峡も考えられなくはない(小板バス停から餅ノ木までおよそ4km)。
三段峡の見どころ
三段峡内には,見どころとされる箇所が多々ある。たとえば最近では,「五大壮観」として,「三ツ滝」「三段滝」「二段滝」「猿飛」「黒淵」が紹介されている。(→峡谷図)
三段峡は,紅葉の時期の訪問者がとくに多い。三段峡の紅葉はたしかに美しいが,初夏の新緑もそれに負けず劣らず美しい。紅葉の時期にくらべて訪問者が少ないのも,快適だろう。もしかすると,モリアオガエル(の卵)に出会えるかもしれない。あるいは真夏に,谷から吹き下りてくる涼風を楽しむのもおすすめである。
冬は,遊歩道の除雪等がなされないので,訪問が難しいこともあるだろう。
三段峡の周辺
三段峡の北,樽床盆地には定住集落があったが,樽床ダムにより聖湖がつくられこの集落は水没した。聖湖畔にはキャンプ場が設けられ,さらに北の八幡盆地や東の深入山には公園が整備されている。八幡盆地はかつて広大な湿原であったが,人の生活とともに徐々に破壊され,ごく小規模な湿原がその名残をとどめるにすぎない。臥竜山にはブナなどの林があり,バードウォッチャの姿もよく見かける。
田代出合から,田代川上流にかけては,奥三段峡と呼ばれる。しかし,田代出合から田代にかけては林道が開設されており,現在では田代からさらに上流の,イキイシ谷より上流だけを,奥三段峡と呼ぶことが一般的のようだ。ここは人があまり立ち入らない,秘境の雰囲気を残している。
田代出合から横川川沿いの集落には,かつて学校も存在した。横川川にかかる魚切滝も,見所の1つである。恐羅漢山にはスキー場も開発され,内黒峠を通る道路は,狭いところがありながら,ロードヒーティング設備により,冬期の通行にも配慮されている。
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